XLの名を持つショベルヘッド
Kモデルのテクノロジーを受け継いだスポーツライドが楽しめるモーターサイクル。
ショベルヘッドスポーツスターは、1957〜1985年のモデル。
サイドバルブエンジンのKモデルから進化して登場したXLスポーツスター。車体はKモデルから流用しながらも、新型OHVエンジンを搭載した。Kモデルと同じく4カムでいち早くショベルヘッドと同じ構造のヘッドを採用していた。
通称「アイアンスポーツ」その由来とは、
ショベルヘッドとエヴォリューションの2種類のエンジンしかないスポーツスターは、鋳鉄製のシリンダーであるショベル搭載車については、アルミシリンダーとなったエヴォリューションエンジンと区別する意味で「アイアンスポーツ」と呼ばれている。
または、ビッグツインのショベルヘッドがアルミ製のヘッドなのに対し、スポーツスターは鉄製ヘッドを採用していたことに由来する。
スポーティな走りを求めたモデル、スポーツスター。
今回は、アイアンスポーツを見ていきましょう。
ビッグツインのショベルヘッドについてはこちらの記事をご覧下さい↓↓↓
ハーレーダビッドソン・ショベルヘッドを知ろう【ビッグツイン編】
Kモデルを知る
まずは、スポーツスターの起源となった、「Kモデル」とは?
1952年〜1956年
当時モータースポーツ界を圧巻していたイギリス製のバーチカルツインのモーターサイクルに対抗するために開発されたモデル。
排気量750cc
新設計のフレーム。英国車を参考にしたとされている。「Kフレーム」
電装系6V キック始動
エンジン・サイドバルブ
バルブ駆動4カム
ハーレーダビッドソン初、リアサスペンションを搭載。
ハーレーダビッドソン初、スイングアーム搭載。
30psで最高速158.24km/hをマークしたとされる。諸説あり。
エンジンとミッションの一体化モデル
ハンドクラッチとフットシフトを標準装備
シフトチェンジは右側シフト
Kモデルの派生モデル
- KR・・・52年〜
- KH・・・1954年〜、排気量を750ccから883ccに拡大した。トランスミッションなど各部に改良が加えられた。38ps最高速150km/h以上を記録
- KHK・・・55年〜、エンジンパーツを見直したレース仕様。大型のヘッドライトナセルが特徴的でフューエルタンクはビッグピーナッツタンクと呼ばれ17ℓ入る。
アイアンスポーツの知識
Kモデルのシャシーに、ショベルヘッドエンジンを組み合わせたのがXL系スポーツスター。
当時、レースを圧巻していた英国車に勝つべく誕生したスポーツモデル。
XL系には、この頃XLHとXLCHがあり、ツアラー仕様のXLH・レース仕様のXLCHとされていた。CHはハイコンプレッションやレーシングタイプのマグネトーを装備したハイパフォーマンスモデル。XLHが最高出力40psに対し、XLCHは55psとなっている。
排気量は当初883ccであるが72年モデルからは1000ccへアップされている。これは並み居るハイパワーな日本製モデルに対抗するためとされている。
76年以降からシフトチェンジは現在と同じ、左側になった。
年式別モデルの特徴
1957年
XLスポーツスターデビュー
1958年
XLCHスポーツスター・・・バッテリーを必要としないマグネトー点火。小ぶりな外装パーツなどでシンプルに仕上げられた競技用モデル。
1959年
XLHスポーツスター・・・深いフェンダー、容量14ℓの大型タンク、2人乗りが可能なバディシート、サドルバッグなどツアラー的装備を充実させた。ヘッドライトナセルを採用。
1960年
XLCHスポーツスター・・・排気量883cc、変速機4速、フューエルタンク容量8.7ℓ、車両自重199kg。
1963年
XLHスポーツスター・・・ヘッドライトナセルや大型のフェンダーを装備するなど、FL系を意識したデザインとなっており、走りに方向性を振ったXLCHと差別化されていた。61年からは、ダブルシートが標準装備されたほか、タンクデザインの一新された。車両重量230kg、フューエルタンク容量14.1ℓ。
XLCHスポーツスター・・・モデル名に付く「CH」とは、「コンペティション・ホット」を意味している。この年のモデルより、マフラーがダウンレイアウトのデュアルエキゾーストモデルに変更された。これは、当初の、アップタイプにレイアウトされたマフラーによる発熱がライダーを苦しめたからだ。
1965年
XLHスポーツスター・・・通称「亀の子タンク」を採用。バッテリーが12V化された。
1966年
通称「ハム缶」スタイルのエアクリーナーが採用された
1967年
XLHのヘッドライトナセルが小型化された。
セルスターターを標準装備
1968年
キックスターターを廃止
1970年
手動点火タイミングを自動化。タイマーカバーが増設された。
1971年
XLHスポーツスター・・・タンクサイドに「ナンバー1」のデカールがついているモデル。これは、69年のAMAチャンピオン獲得に続き、70年にはスポーツスターをベースにしたランドスピードレコーダーがボンネビルにて時速427kmをマークしたことを誇示するためだった。
XLHスポーツスター・・・この年に登場した、FXスーパーグライドよりも早く、スポーツスターではボートテールタイプのシートカウルを採用していた。これはオプションであった。そのため、完全な形で存在しているものはそれほど多くない。非常に希少なスポーツスターなのだ。
1972年
XL1000・・・この年から排気量1000ccになる。正確には997.45cc。最高出力61ps
1973年
フロントブレーキをディスク化
1975年
フットシフトが右チェンジから、左チェンジに変更された
1976年
XLCH1000・・・旧XLHは12Vバッテリー点火、CHは6Vのレーシングマグネトーであったが、1000ccとなってからは、XLHセルスターター、CHがキックスターターのみとなっている。また、ヘッドライトのナセルは廃止となり外観の違いはほぼ無くなった。
1977年
XLCRカフェレーサー・・・ウィリー・G・ダビッドソンがデザインしたモデル。「CR」とはカフェレーサーの意味。ビキニカウル、独特なリヤフェンダー、オールブラックのカラーリングが特徴のスタイル。イギリスで生まれたカフェレーサースタイルをアメリカの色でデザインしたとされている。ハーレーダビッドソンとしては、純正カフェレーサースタイルで珍しいモデルだが、当時は不人気車でわずか2年で生産終了となる。このモデル用に作ったフレームは通称「CRフレーム」と呼ばれていて従来のスポーツスターよりも5馬力アップしたエンジンが搭載された。モーリス製のキャストホイールは、77年モデルは7本で78年モデルは9本となっており、年式を見分けるポイントとなっている。車重は275kg。
XLT1000スポーツスター・・・ロングツーリングまでこなせるワンイヤーモデル。ウインドシールドとリヤバッグが装備されている。フューエルタンクは通称「ゴキタン」と呼ばれる、73年以降にFX系に装備されていた物が採用されている。左シフトチェンジ、右ブレーキ仕様。
1978年
XLH1000スポーツスター・・・Kフレームを採用した最後のモデル。ハーレーダビッドソン生誕75周年記念モデル。タンクはミッドナイトブラックをベースにゴールドのピンストが描かれる。ホイールはアルミ製でゴールドカラーとなっている。
XLCH1000スポーツスター・・・Kフレームを採用した最後のモデル。フロントブレーキがダブルディスクに変更された。
1979年
XLS100ロードスター・・・ブレーキはトリプルディスクが採用されており、走りを意識している。ロングフォーク、段付きシート、クロームメッキの多用などで高級感を演出している。スポーツスターのローライダーと言えるモデル。最高出力61ps
XLH1000スポーツスター・・・この時代、スポーツスターは当初の方向性から離れ、スモールツアラーの位置付けになっていた。最高出力61ps
XLCH1000スポーツスター・・・この年のXLHは、Pカムを装備し、最高出力は68psを叩き出した。
1981年
XLS1000ロードスター・・・フューエルタンクの形状が変更され、エキゾーストのレイアウトも一新された、チョッパーテイストの強いモデルとなった。
XLH1000スポーツスター・・・通称「CRフレーム」は、強度不足が否めずこの年を最後に変更が図られる。
1982年
スポーツスター25周年
通称「エボフレーム」が開発される。このフレームは1982年〜2003年まで採用されていて、1994年に後部が改良されている。CRフレームをベースに剛性を高められたフレームだ。
XLS1000ロードスター・・・チョッパーテイストのこのモデルは、シーシーバーを装備しツーリングなどにも使えるモデルとして人気があった。FXEのタンク「ゴキタン」を装備するなど、ビッグツイン的ディティールが与えられているのが特徴。
XLスポーツスター
XLH1000スポーツスター
1983年
XR1000・・・市販レーサー仕様のモデル。最高出力は70ps。レースキットを組むことで90psを発生していた。
XLSロードスター・・・ビッグツインのローライダーを意識しているモデル。フューエルタンクのオンダッシュのメーターが特徴だ。
XLX-61・・・この年に、スポーティな走りを意識して登場したモデル。ローハンドルにシートはシングルタイプを装備している。シンプルな仕様と低価格でスポーツスターの人気が復活したとされている。「61」はキュービックインチを表している。
XLHスポーツスター・・・プルバックハンドル、タンデムシートを装備したモデル。
1984年
XR1000・・・スポーツスター系の最高位バージョン。この年式も発売当初のままリリースされている。
XLX-61・・・XR1000の弟的位置に当たる。基本的にはXLHと同じシャシーとエンジンを搭載している。
XLSロードスター・・・このモデルはXL系で唯一、スポーツタンクではなくビッグツイン系のタンクを装備している。
XLHスポーツスター・・・この時期、スポーツスターの名がついていた唯一のモデルはこの「XLH」だけとなる。この年から、スモールピーナッツタンクの採用、新型メーター、フロントブレーキキャリパー、フロントフォークなどが改良された。
進化と歴史
1969年・・・AMF傘下に入る。
1971年・・・この年のモデルからタンクに「AMF」のロゴが入る。
1972年・・・排気量1000ccになる
1976年・・・XLCHヘッドライトナセル廃止・シフトチェンジが左側に変更される。
1977年・・・XLCR登場
1978年・・・Kフレーム終了、883ccから1000ccへ排気量アップによりフレームの剛性がついていけなかったのが理由と言われている。
1979年・・・通称「CRフレーム」に変更。全てのスポーツスターに使用される。
1981年・・・通称「CRフレーム」終了、やはり強度不足であった。バッテリーとオイルタンクを覆っていたサイドカバーが廃止された。
1982年・・・ニューフレーム登場。「CRフレーム」をベースに、背骨にあたるメインチューブ径を太くし、更にスイングアームのピボット部まで伸ばすことで剛性を飛躍的に高めた。「エボフレーム」と呼ばれ、このフレームは次世代のエヴォリューションにも使われることとなる。
最後に
スポーツスターを紐解くと「Kモデル」にさかのぼり、そこにはモータースポーツ界に熱く情熱を注ぐハーレーダビッドソンが見えてくる。そして、他国の優れたモデルに対抗してスポーツスターは進化をしていく。
独自のルートを進んできた「アイアンスポーツ」は、ショベルビッグツインとはまた別の魅力が詰まったモデルである。
1985年を最後にアイアンスポーツの時代は幕を閉じ、新しいエンジン「エボリューション」にバトンを渡した。
スポーツスターエボリューションの記事はこちら↓↓↓
ハーレーダビッドソン・エボリューションを知ろう【スポーツスター編・1986年〜2003年】
スポーツスターの始祖「Kモデル」Kモデル、サイドバルブを紹介した記事はこちら↓↓↓
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