ハーレーダビッドソン・エボリューションを知ろう【スポーツスター編・1986年〜2003年】

ハーレーダビッドソン

ルーツはレースマシン・それがスポーツスター

今回は、1986年〜2003年までのスポーツスター、通称「リジスポ」を紹介します。

日本で、スポーツスターと言えばハーレー初心者向けのモデルと思われがちですが、そのルーツを辿ればスポーツスターは当初オートレースで他国のモーターサイクルに勝つために作られてきたモデルと言うことを理解しなければなりません。

エンジンについて

ビッグツインから遅れること2年、スポーツスターに新型エンジンが搭載された。ショベル時代の問題点だった放熱性を考え、材質は放熱性の高いオールアルミ製、そしてヘッドからクランクケースまでを貫通させたスタッドボルトを採用するなど、コンピューター設計によって剛性と信頼性が向上された。チューニングにも対応する耐久性も備えている。

ミッション一体式、そして4カムと言う従来のレイアウトは受け継がれている。

フレームについて

フレームは、ショベル時代の「CRフレーム」をベースに剛性を飛躍的に高めた、通称「エボフレーム」を採用している。このフレームは1982年〜2003年まで使用されている。

エボスポの始まり

このフレームにエボリューションのエンジンを搭載したモデルは、当初排気量883ccと1100ccで登場した。1988年には、1100ccから1200ccになり、この「883cc」と「1200cc」のラインナップは現在まで変わっていない。また1990年までは変速機は4速で、翌年から5速に変更された。チェーンドライブからベルトドライブに変更されたりと、さまざまな進化をしてきた。

それでは、年式に沿ってモデルの違いを見ていきましょう

年式とモデル

1986年

XLH883、XLH1100 2パターンがラインナップ

1987年

前後ローダウン、プルバックハンドル、ファクトリーカスタムのXLH883ハガーが限定で販売される

1988

1100ccが1200ccとなる。フロントフォークの径がφ35からφ39に強化、スイングアームも強化。ケーヒン製のCVキャブレターに変更された。

XLH883スポーツスターハガーがレギュラーモデルとしてラインナップされる。日本仕様では、ホイールがスポークとなっている

ダブルシートを装着した、883デラックスモデルもラインナップ

1991年

変速機が4速から5速に変更された。これにより、高速走行性能が向上し最大トルクも増えた。

XLH1200は、XL系で最上級モデルに位置し、この年からファイナルドライブがチェーンからベルトに変更され、アップハンドルにタコメーター、ダブルシートを装備している。エンジンのシリンダーはブラックに塗装されている

1993年

XLH1200より遅れること2年、883のファイナルドライブにベルトが採用された。この年からスポーツスターシリーズ全車種のファイナルドライブにベルトが採用された。

XLH1200・・・90周年記念車が、年号と同じ1993台生産された。エンジントリムがポリッシュされ、ロック付きジフィースタンドを装備。

1994年

フレーム後部を大幅に改良。リヤセクションを鋳造とし、シャーシーの長期耐久性を追求した。新型コネクターとワイヤーハーネスを使用し、電装系の信頼が向上した。プライマリーカバー変更でケーブル交換が容易になった。

スポークホイール仕様のXLH1200モデル。新しいイグニッションスイッチにより、エンジンオフ状態でハザードやアクセサリーが使用可能になった。

9本キャストを装備した、XLH1200Sモデル。

1996年

当時XLH883の価格は88万3000円で人気を博した。

ガソリンタンクが3.3ガロンに大型化、航続距離は4割以上になった。

新型の電子スピードメーターが採用される。

XL1200S・・・新型の前後サスペンションは、初の減衰力調整機能付き。フロントは圧縮側14、リバウンド側は15段階。リヤはリザーバータンク付きで圧縮、リバウンド共に15段階の調整ができる。ブレーキは、前後ともフローティングディスクブレーキを採用し、フロントはデュアルで装着されている。ホイールは新しい13本キャストホイールを装備。ハンドルは、ローライズバーとなった。

XL1200C・・・スポーツスターシリーズ初となるカスタムモデル。フロントに21インチ、新型ライザー、クロームメッキケース、ロッカーカバーが特徴。

1997年

吸排気系を改良し、よりスムーズな吸排気を行えるようになった。新型のシールドバッテリーを搭載し、寒冷時のエンジン始動に必要なクランキングを向上させている。

タンクデザイン、グラフィックが一新され、容量は12.3ℓになった。

1998年

XL1200S・・・エンジンはデュアルプラグで10.1の圧縮比を持つ新型のシリンダーヘッドを搭載。新しいプロファイルのカムを組み込み、バルブの開き時間を長くして吸排気効率を改善した。新設計のモジュール、4芯コイル、新型マップセンサーを採用し、電装系も強化している。最大トルクが約15%向上し、ロッカーカバーやクランクケースなどは、砂型エンジン風のパウダーコートで塗装されている。

XL1200C・・・ハーレーダビッドソン105周年記念モデル。ガソリンタンクにアニバーサリーロゴが装飾されている。

1999年

XL883C・・・1200Cに続くカスタムモデル

XL1200C・・・フォワードコントロールを新採用し、21インチホイール&スロッティドディスクホイールを採用

2000年

XL883CIN・・・スポーツスターカスタムにファットボブタイプの16.7ℓタンクを搭載したモデル

XL883C・・・フロント21インチホイール、フォワードステップ、バーハンドルを採用したモデル

XL1200C・・・フロント21インチホイール、ファットボブタイプの16.7ℓタンクを搭載したモデル

2001年

カムギア駆動とオイルポンプを改良してメカノイズを減少させている

2002年

ブレーキキャリパーを対向4ポットに変更。エンジンやミッションも変更された

XLH883R・・・ダートトラッカースタイルのハンドル、シートを装着。エンジンはブラック塗装が施され、専用の2in1エキゾーストシステムを採用する。フロントブレーキはダブルディスクで、前後キャストホイールを履く。カラーリングはハーレー・レーシングチームを彷彿させるオレンジのカラーリングが際立つモデルとなっている。

2003年

エンジンを直接フレームにマウントしていた「リジスポ」はこの年で終わり、翌年からは「ラバーマウント」に変更される。

おすすめモデル

紹介したモデルの中でおすすめしたいモデルは、

「XLH1200S」です。その理由は

  • ビッグツインに劣らないパワー
  • 燃料タンクの大きさ
  • 装備の充実

排気量1200ccは、街乗りでは十分すぎるスペックであり、高速道路でも余裕を持った走行が可能である。エンジンの構造や車体重量の軽さ(225kg)などを考慮しても、1340ccのビッグツインを凌駕(りょうが)する走りが期待できる。

スポーツスターの弱みである燃料タンクの小ささ(その小さいタンクが魅力的なのだが)は給油ポイントに気を使う時がしばしば。しかし、このモデルは燃料タンクの容量が12.5ℓ、燃費20km/ℓ以上あるため約250km走行可能である。

1200Sは装備も充実している。前後のサスペンションは減衰力調整機能付き、フロントブレーキはデュアルディスクブレーキ、13本キャストホイールなど乗り心地、走りを重視している。

XLシリーズの中で最上級モデルとしているのが「XLH1200」であり、その XLH1200をさらにスポーティーにしたのが「XL1200S」。価格も他のXLモデルより当然高くなっている。数年前までは50〜100万円で買えてた車両だが、現在は倍以上する。この値段高騰はどのモデルにでも言えることなので、気に入った車両が見つかったら一期一会だと思うのもいいかもしれない。エボももはや旧車と呼ばれてきている。状態のいい車両は年々減少しているので、買うなら早い方がいいと思う今日この頃である。

最後に

エンジンがアルミ製になったことにより、耐久性が飛躍的に増したエボリューション。電装系、吸排気も進化をしてショベル時代の問題点を克服した完成度の高いモデルとなった。

Kモデルから受け継いできた、オートレースに勝つと言うスタイルを崩すことなく、スポーツスターは独自の進化をし続ける。

ドコドコ感をゆっくり感じられる883シリーズ

走りを求めた883R

883派生モデルの883C、883ハガー

ハイパワー1200シリーズ

ハイスペックモデル1200S

「エボフレーム」は2003年に幕を閉じ、次世代の「ラバーマウントフレーム」にバトンを渡す。

スポーツスターの歴史についてもっと知りたい方はこちらをチェック↓↓↓

ハーレーダビッドソン・ショベルヘッドを知ろう【スポーツスター編】

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