ハーレーダビッドソン・エボリューションを知ろう【ビッグツイン編】

ハーレーダビッドソン

進化という名のエボリューション

エボリューションは、1984年〜1999年までのモデル。

日本では通称「エヴォ」と呼ばれている。

エボリューションはハーレー社によって正式に命名されたもの。ロッカーカバーがレンガを積み重ねたような形をしていることから、ショベルヘッドまでの「○○ヘッド」という命名方にならったブロックヘッドというニックネームがあるが、あまり一般的になってない。

最大の特徴は、日本企業の生産管理に学んだ高品質とメンテナンスフリー。それが進化という名の「V2エボリューション」である。

エンジンについて

エボの排気量は1種類で1340ccのみ。

今までのVツインとの決定的な違いは、ケース、シリンダー、ヘッド、ロッカーカバーに至るまでアルミを用いられたことである。オールアルミ化により、軽量化と放熱性は大きく向上した。ヘッド、ケース、シリンダーは上下に伸びる貫通ボルトによって組み合わされており、圧縮比は8.5:1に設定された。

コンピューターで設計されたカムシャフトはコンピュカムと呼ばれ、バルブタイミングもコンピューターで算出。それまで強制開閉式だったキャブレターは、90年代に入ってから負圧式のケーヒン製CVキャブレターを採用した。これにより、ラフなスロットル開閉にも、柔軟に対応し乗りやすさを実現したのである。

先代の「ショベルヘッド」より10%の馬力UPと、オイル漏れを根絶したエボリューション。メンテナンスフリーになった新エンジンは新たなファンを獲得し後に起こった世界規模のハーレーブームに火を付けた。

デビューした当初の初期型こそ、クランクシャフト、フライホイールなど、ショベルヘッドから流用したパーツがあったものの、エボの登場はそれ以前の歴代エンジンが、パンがナックルを、ショベルがパンをそれぞれ改良することで代替わりしたのとは状況が違う。基本的なレイアウトを踏襲(とうしゅう)しつつも、全く新しく造られ、一足飛びに「進化」を進めたエンジンと言える。

伝説のモデル・ソフテイル

FXSTソフテイル・・・ショベルヘッド時代後期に、経営不振による品質劣化などで著しく低下した信頼性を取り戻すべく登場したOHV第四世代エンジン「エボリューション」

ハーレーダビッドソン初のオールアルミ製となったこの心臓部に、一見リジットに見えながら、実はリンク式のサスペンションを装備するソフテイルフレームを組み合わせたのがFXSTであり、このコンビネーションが瞬く間に大人気を博した。

ソフテイルの由来は、昔のリジットフレームをハードフレームと呼ぶことから、その逆として名付けられた。

このフレームはミズーリ州のビル・デイビスというカスタムビルダーが考案した物を、ハーレーダビッドソンが買い取ったため生まれた。

まさにハーレーダビッドソンを窮地から救った歴史的モデルである。

モデル紹介

1984年〜 この年はエンジンとして過渡期にあたる時代ゆえ、エボリューションとショベルヘッドの2つのモデルが存在する。

FXRPポリス・・・エボリューション登場と同時に、カリフォルニアハイウェイパトロールに採用されたのがこのモデル。ベースとなったのは83年に開発されたFXRT。

FLHエレクトラグライド・・・ショベルヘッドが搭載されていた。

FLHTCエレクトラグライドクラシック・・・エボリューション搭載。

FLTCツアーグライドクラシック・・・エボリューション搭載。

FXRSローグライド・・・エボリューション搭載、ラバーマウント。

FXRTスポーツグライド・・・エボリューション搭載、ラバーマウント。

FXEスーパーグランド・・・84年モデルのスーパーグライドはショベルのままリリース。

FXSBローライダー・・・84年のFX系はショベルヘッド搭載。

FXWGワイドグライド・・・ショベルヘッド搭載。セカンダリードライブはベルトを採用。

1985年

FXSTソフテイル・・・この年を最後に、キックスターターが廃止となった

FXWGワイドグライド・・・セカンダリードライブがベルトになる

FLTCツアーグライドクラシック・・・エアサスとベルトドライブを採用

FXRSローグライド・・・セカンダリードライブがベルトになる

FXEFファットボブ・・・この年、旧型のグライドフレーム系に新型が追加された

1986年

FLHTCエレクトラグライドクラシック・・・車両重量323kg

FLSTヘリテイジソフテイル・・・FXSTソフテイルの登場によって、ファンから要望が多く上がった往年のスタイルを実現したのがヘリテイジ。フロントには馴染み深いグライドフォークを装備し、パンヘッド時代のハイドラグライドを彷彿させる。この後、ソフテイルはFX系とFL系という2つの流れを持つこととなる。

FXRスーパーグライドⅡ・・・FXR系はこの年よりバリエーションも豊富になり、ついにショベル時代のグライドフレームを使用したFX系はラインナップから消える。

FXRS-Sローライダースポーツ・・・ローライダーの名はこのFXR系へ移行された。

FXRDグランドツーリングエディション・・・この年限りのレアモデル

FXRTスポーツグライド・・・92年まで生産されたロングセラーモデル

FXSTソフテイル・・・当初キックと4速ミッションだったが、この年からセルスターターのみとなり5速へ変更された。これによって、更にソフテイルの人気が不動となり、日本でもハーレーがブームとなり始めた。

FXSTCソフテイルカスタム・・・リヤホイールをディッシュ化、バックレストを装備した豪華モデル。カラーも特別色となっている

FXWGワイドグライド・・・エボリューション搭載

1987年

FXRTスポーツグライド・・・この年のモデルでミッションに変更が加えられ、クラッチも強化された。

FXLRローライダーカスタム・・・この年より新たにラインナップされたモデル。フロントホイールは21インチを装備。初期のワイドグライドを彷彿させるスタイルとなっている。

FXRS-Sローライダースポーツ・・・FXRSに対し、より高い走りを追求したスポーツエディション。フロントブレーキはダブルディスクを装備し、車高が少し高くなり幅広い走りに対抗している。ミッションとクラッチに変更が加えられた。

1988年

FXSTSスプリンガーソフテイル・・・ハーレーダビッドソン創立85年を記念して誕生したのがこのモデル。フロントフォークのスプリンガーが特徴的で、ナックルヘッドや48年式パンヘッドを彷彿させる。このスプリンガーはコンピューター設計で新しく開発された全くの新型であり、テレスコピックにも引けを取らない性能がある。スペシャルモデルであったため高い人気を博したことにより、翌年からレギュラーモデルとしてラインナップされた。

FLHTCエレクトラグライドクラシック・・・FL系最上位バージョンであったこのモデル。この年、ウルトラクラシックの登場によってその座を明け渡した。

FLHSエレクトラグライドスポーツ・・・この年より誕生したモデル。ウインドシールドを装着しパンヘッド時代を思わせる。いまのロードキングへと繋がるモデルである。

FXLRローライダーカスタム・・・フロントホイールは21インチのスポークホイール、リアには16インチのディッシュホイールを装備し、クロームパーツを多用している。エンジンはブラック&クロームで仕上げられている。

1989年

FLHT-Pエレクトラグライドポリス・・・アメリカ各州の警察車両は一時、日本のカワサキが採用されていたが、やがてハーレーが採用されるようになる。この車両は、エレクトラグライドをベースにした警察仕様で、専用の灯火類と無線機に対応させるため、オルタネーターは標準より強化されたものが装備されている。

FXRPパースートグライド・・・1984年に登場したFXRTベースのポリス仕様。FLHT-Pよりも高機動モデルとして採用された。88年モデルよりフロントフォークがφ35mmからφ39mmに変更され、より高いライディングが可能になっている。

1990年

FLSTFファットボーイ・・・カラーリングはシルバーで統一。フレームはパウダーコートを施している。前後16インチのアルミキャストディッシュホイール、ハイドラグライドを思わせるフロントフォークを装備。エンジンのロッカーアームカバー、タイマーカバーにはイエローのラインが入っている。ショットガンスタイルのマフラー、FLスタイルのワイドハンドルなど個性的なモデルである。ちなみに、大ヒット映画「ターミネーター2」でアーノルド・シュワルツェネッガーが演じるサイバーダイン社製T800がバーのオーナーから拝借したのはこのモデルである。

FLTCツアーグライドクラシック・・・デュアルヘッドライトを備える大型フェアリング、リヤにはエアサスを装備。

FLTC-Uツアーグライドウルトラクラシック・・・FLTCの上位モデル。デュアルステレオシステム、インターコム、オートクルーズなどを装備している。

FXRS-Cローライダーコンバーチブル・・・シーシーバー、エアアンチダイブ機構付きフロントフォーク、大型サドルバックなどを装備。

1991年

FXDBダイナグライドスタージス・・・ベルトドライブ車の原点となった、ショベルヘッドのFXBスタージスから10年。コンピュータ設計のアイソレーションマウント方式である、新型のダイナフレームにEVOエンジンを搭載。エンジン、ミッション、外装は全てブラックで塗装され、キャストホイールにはオレンジのピンストライプが入っているのも、初代と同じ仕様。モデル名のDはダイナフレームを、Bはベルトドライブを表している。生産台数は1600台だった。

FLSTFファットボーイ・・・2年目からは、全6カラーが展開された。

1992年

FLHTCエレクトラグライドウルトラクラシックサイドカー・・・サイドカー付き

FXDBダイナデイトナ・・・米国バイクイベント・デイトナバイクウィーク50周年記念のモデルで1700台限定。

FXDCダイナグライドカスタム・・・ダイナシリーズ初の量産型モデル。

1993年

FLSTNヘリテイジノスタルジア・・・この年のみ生産されたモデルで2700台生産された。ホワイトウォールのタイヤと天然牛革をタンクダッシュとシートに使用している。タンクのエンブレムは七宝で作られたもので、シートはパッセンジャー側を取り外すことが可能となっている。マフラーはショットガンスタイルのフィッシュタイプ。

FXDWGダイナワイドグライド・・・ファクトリーチョッパーと呼ばれたショベルヘッドFXWGから13年。ダイナフレームとEVOエンジンでワイドグライドが復活した。幅広のトリプルツリーに最長のグライドフォークを装着。外装は新タイプのワンピースファットボブタンクと、新しいフォルムのリヤボブフェンダーとなった。タンク側面には初代WGを思わせるファイアーパターンが施されている。ハーレー社の90周年記念車も用意され、その生産台数は限定1993台だった。

FXDLダイナローライダー・・・ローライダー伝統の縦2コンソールに新型電子メーターを採用。

1994年

FLHRエレクトラグライドロードキング・・・FLHSに代わって登場したモデル。大型ナセル、大径ヘッドライト、新型で取り外しが容易にできるデタッチャブルウインドシールドが特徴。サスペンションはエア調整式、新型のスピードメーターは電気式となっている。

FLSTNヘリテイジソフテイルスペシャル・・・ノスタルジアの名が変更された

FXRスーパーグライド・・・この年が最後となった、FXRシリーズ。

1995年

FXSTSBバッドボーイ・・・スプリンガーフォーク、サイドにスキャロップの入ったファットボブタンク、オイルタンク、フェンダーサポートなど、車体を全て黒で統一したモデル。ソフテイルスプリンガーのカスタム仕様で、前後ブレーキは新しくフローティングディスクを採用。リヤのディッシュホイールは、穴の開いたデザインになった。シートはデザイン性の高いスタッズ付きで、タンクのスキャロップラインは赤と青の2種あった。

FXDダイナスーパーグライド・・・FXRからスーパーグライドの名を受け継いだモデル。28度レイクのダイナフレームは当時、スポーツシャーシーと言われた。

1999年

FXSTBナイトトレイン・・・タンクやフェンダーをビッドブラック、エボリューションエンジンやトランスミッションをリンクルブラックと、2種類の黒を使ったモデル。FXSTと同じネック角34度のソフテイルフレームを使用。

最後に

伝統を受け継ぎつつ「進化」したVツイン。

エボはスペックの上でも、耐久性の上でも申し分のないものではあったが、1990年代に入ると、アメリカ国内のハイウェイの制限速度が引き上げられたという背景もあって、より高速走行に耐えれるエンジンが求められるようになった。

そこで開発された新エンジンが「ツインカム88」である。

こうしてエボは1999年に役目を終え、次世代エンジンツインカム88にバトンを渡した。

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モーターサイクルミュージアム【MCM】とは、日本4大メーカー・ハーレーダビッドソン・インディアン・BMW・トライアンフ・ドゥカティ・ロイヤルエンフィールド・素晴らしいモーターサイクルの世界を歴史と共に紐解くサイトです。各メーカーの知恵と技術と努力を調べています。温故知新。世界の名機をぎゅっと詰め込んだそんなサイトを作りたいと思っています。

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