ハーレーダビッドソン・パンヘッドってどんなハーレー?

ハーレーダビッドソン

ザ・ビンテージハーレー【パンヘッド】

ナックルヘッドの後継モデルとして、パンヘッドは1948年〜1965年のおよそ17年間作られました。

ロッカーカバーが【パン=鍋】の形をしているためそう呼ばれています。

パンヘッドは、当時のアメリカの最新技術を惜しみなく使われておりハーレーダビッドソンの黄金期、いや、「アメリカの黄金期」を築いた象徴的モーターサイクルです。

今回は、歴史深いハーレーダビッドソンの中でも特に人気のあるモーターサイクル「パンヘッド」に触れていきましょう。

パンヘッド=エンジンの進化

ナックルヘッドからフルモデルチェンジした「パンヘッド」と呼ばれるOHV(オーバーヘッドバルブ)・Vツインエンジン。最高出力は先代の「ナックルヘッド」とほとんど変わりはないですが、アルミ製のシリンダーヘッドや油圧タペットを内臓したプッシュロッドを採用するなど、耐久性や冷却効果を向上し、信頼性を大きくアップさせた。

  • 1000cc(61cu.in.) 1200cc(74cu.in.)がある
  • OHVエンジンは当時、フラッドヘッド(1210cc)(1300cc)のオーバーヒート問題を克服していた

エンジンスペック

61系Eモデル

  • 84.1×88.9mm
  • 1000cc
  • 36~38ps/4800rpm

74系Fモデル

  • 87.3×100.81mm
  • ロングストローク1206.7cc
  • 46ps/4600rpm

「鍋」の形のパンカバーは、一見ただの蓋に過ぎないが、実は耳障りなタペット音を消音させるのにひと役買っている。

先代の「ナックルヘッド」は当時としては、非常に優れたモデルだったが、構造は簡素で、まだまだ改善の余地が残されていた。後期になるにつれて改良されたとは言え、オイル漏れ、オーバーヒートなどのトラブルがよくあった。

「ナックルヘッド」のオイルラインはエンジンの外側に設置したパイプラインを介したもので、オイルの潤滑は確実であるが、その手法は古典的とも言えた。「パンヘッド」はオイルラインがエンジンの内側を通るようにした。こうしてシリンダー内にオイルラインを通る構造にしたことにより、機能的にもデザイン的にも進化した。このシリンダー内にオイルラインを通す技法はドイツのBMWから学んだものである。「パンヘッド」の時代にエンジンのオイルラインの経路や潤滑などを徹底的に研究した結果、後継モデルの「ショベルヘッド」の販売にあたって大きな問題もなくスムーズに開発が進んだとされている。

ナックルヘッドについての記事はこちらから↓↓↓

ハーレーダビッドソン・ナックルヘッドってどんなハーレー?

53〜55ps/5400rpmによって最高速度160km/hを記録している。また、ゼロヨンは15秒台で当時のモーターサイクルでは最速の部類であった。

キャブレターはリンカート製が採用されている。

年式によって異なる特徴

パンヘッドには、大きく分けて

「ヨンパチ」「ハイドラグライド」「デュオグライド」「エレクトラグライド」に分けられる。

また年式により細かい違いもある。

それぞれを年代別に見ていきましょう。

1948年 通称【ヨンパチ】

FLモデルスペック

全長:2230mm

全高:1100mm

ホイールベース:1500mm

シート高:770mm

乾燥重量:250kg

排気量:1200cc

ボア×ストローク:87.3×100.8mm

圧縮比:7.0:1

最高出力:50hp

トランスミッション:4速ハンドシフト

クラッチ:乾式多板フットクラッチ

燃料タンク:14.3ℓ

バッテリー:6V

始動方式:キック

サスペンション:Fスプリンガー Rリジット

  • パンヘッド誕生の年
  • フロントフォークが、ナックルヘッドと同じスプリンガーフォーク
  • リジッドフレームにスプリンガーフォークの「幻のモデル」
  • エンジンのオイル潤滑面を48年だけで3回も改良を加えている
  • ウィッシュボーンフレーム
  • 3.75ガロンのフューエルタンク
  • ディープフェンダー
  • 前後16インチのホイール

スプリンガーフォークのパンヘッドとしてそのクラシカルなフォルムで圧倒的に人気が高く、1年しか生産されなかったため、その希少性も高い。

リジッドフレームとは・・・「ハードテイル」とも呼ばれる。リヤサスペンション機能を持たない構造のフレームのことを言います。リジッドは「硬くて曲がらない」と言う意味の英単語です。リヤサスペンションが開発されるまでは、全てのモーターサイクルはリジッドフレームでした。

スプリンガーフォークとは・・・スプリングが剥き出しのフロントフォーク。オイル系のパーツが使われてないのでメンテナンスが楽なのが特徴。

1949年 ハイドラグライド

  • テレスコピックフォークまたは「グライドフォーク」と呼ばれるフロントフォーク
  • ハイドロリックフォークから由来して「ハイドラグライド」と名づけられた
  • ハイドラとはオイルダンパー入りのテレスコピックフォークから来た呼び名
  • フロントフォークの機構はインナーチューブ内に細身のスプリングを内蔵し、オイルダンパーも近代化した
  • 当時アメリカに輸入されていた多くのイギリス製モーターサイクルはテレスコピックフォーク搭載していた為、テレスコピックフォークは必須だった
  • 当時のライバルBMWをも凌駕するフロントフォーク
  • ハイドラ=油圧/グライド=滑る
  • リジッドフレーム+グライドフォークのビッグツインを「ハイドラグライド」と呼ぶ
  • 1949〜57年までが「ハイドラグライド」
  • テレスコピックフォークの標準装備により、走行性能が飛躍的に向上した
  • フロントフォークは41パイ。これは65年まで同じ。
  • フロントブレーキドラムの拡張、(8in.)まで拡張された
  • フェンダー形状はステーを廃した「ストリームライン」と呼ばれるものに変更

第二次世界大戦中、航空機のためにテレスコピック・ライディングギア(着陸脚)を供給していた「メナスコ社」によっていくつかのフォーク部品は製造されていました。

タンクロゴ、メーター、ストップランプなどのデザインは、ブルックス・スティーブンス氏が担当したもの。ブルックス・スティーブンス氏は、家具、家電、電化製品、自動車、オートバイのアメリカの工業デザイナー。

テレスコピックフォークとは・・・フロントフォークの種類の一つで、バネで路面の凸凹を吸収して、オイルでバネの振動を吸収するサスペンションのことをいう。現在ではほぼ全てテレスコピック式のフロントフォークが使われている。その理由は、ストロークの長さ、構造の単純さ、生産性、コスト、耐久性、が他の方式より優れているからとされている。ちなみに、メンテナンスですが、当然必要でオイルは劣化します。使われてる部品も消耗品ですので交換が必要です。オイル滲みが見られる時は交換時期です。また交換目安は1万キロだとされています。

ビッグツインとは・・・ここで言うツインとはVツインエンジンのことで、シリンダーが2個でツイン。その配置がV型のことをVと呼ぶ。ビッグは排気量が大きい物をビッグとつけるが、何ccからと言う定義は決まっておらず、一説によると1000cc以上だとビッグツインと呼ぶそうです。

「ヨンパチ」つまり1948年のスプリンガーフォークを装備したパンヘッドは、ナックルヘッドからの過渡期のモーターサイクルとも言えるため、ファンの間ではパンヘッドらしさが現れたのは1949年の「ハイドラグライド」からだとも言われている。

1950年

創業者アーサー・ダビッドソン死去

1951年

  • カムローブにクリアランスの傾斜がつけられ、クロムメッキのピストンリングが採用され、新しい一体型ロッカーがつけられた。
  • この年の年末に、フットシフトがオプションとして発表される
  • Dリングが標準装備になる

1952年

  • シフトチェンジがハンドシフトからフットチェンジに変更された(FLFモデル)
  • 1000ccのELモデルの生産が中止となった
  • バルブはオイル保持のために「黒リン酸塩保護コーティング」された
  • プッシュロットがその先端にバルブクリアランスアジャスターを装着した最後の年
  • ハイドロリックバルブクリアランスアジャスターはプッシュロッドのボトムへ移動し、そこには蒸気口と10%出力アップさせるカムチェンジがついた

1953年

ハーレーダビッドソンの創業50周年

1953年にハーレーダビッドソンの生産工場で火災が発生しました。そのため1953年式の「パンヘッド」は非常に少ないです。

継続的低回転によって排気バルブに過熱箇所ができるのを防ぐため「バルブロトキャップ」が採用されました

1955年

  • ビクトリーを意識した「V」字のエンブレムが特徴
  • 60馬力のFLHが登場。「H」は「High compression」高圧縮を意味する
  • エンジンの改良をメインに、トランスミッション、エクステリアにも大きな変更があった
  • 馬力アップに伴い強化された左右のシャフトに対応し、変更されたカムカバーやコンペンセイティングスプロケットの採用によりプライマリーカバーの厚みが増された。
  • パンヘッド初のスーパースポーツソロと釘打った「FLH」モデル
  • FLの圧縮比:7.25、FLHの8と言うハイコンプ仕様がラインナップされる
  • FLHはそれまでのモデルを凌駕する高出力化が計られてエンジンの各パーツも剛性がアップされた

これまでのFLモデルのエンジンと比較すると大幅にアップデートされ、ポテンシャルが向上している。ビクトリーカムがこの年代のFLHの特徴である。

1956年

  • 「パンヘッド」はアメリカのポリス車両としても活躍していた
  • FLHの「ビクトリー」カムは、4800rpmでFLのカムより馬力を12%向上させました

1957年

  • リジットフレームの最終年

1958年 デュオグライド

  • 前後のサスペンションのことを指す「デュオ」グライドが誕生
  • リヤはスイングアーム式のサスペンションで、左右に2つのオイルダンパーサスが装着される
  • シリンダーヘッドのフィンが1インチ大きくされ、エンジンの冷却効果が高められる
  • リヤブレーキは油圧で操作されるようになった
  • リヤサスペンションの装着により、36kg加重することとなった
  • 発電量が大きく安定したジェネレーターを標準装備した
  • 電圧制御できるボルテージレギュレーターを装備
  • リヤブレーキは油圧ドラムに変更
  • フロントフェンダーには「DUO-GLIDE」のエンブレムが装着される

油圧ドラムとは・・・油圧によってシューを押す方式。ディスクブレーキとドラムブレーキの中間のようなシステム

1959年

  • 乾式クラッチ内のプレートの数が3枚から5枚に増加した
  • タンクプレートは「アロー・フリット」と呼ばれ、プラスチック製からダイキャスト製に変更される

1962年

  • スピードメーターの変更
  • ドライブユニットのギア比の変更
  • メーターケーブル、ケーブルクリップなどの変更
  • ストリームライナーシリーズのインストルメントパネルは2ライトから3ライトに変更

1964年

  • デュオグライドの最終年式
  • イグニッションとステアリングヘッドのキーが別となる
  • リヤブレーキは63年モデルより油圧ブレーキのライニング幅が44mmとなり強化された
  • フロントブレーキのワイヤーが太くなった

1965年 エレクトラグライド

  • 「パンヘッド」の最終モデル
  • 電気スタートに変更、セルモーターの装着
  • 「エレクトラ」は電気スタートの意味
  • バッテリーが12ボルトに変更された
  • 12V 32Aのバッテリーが車体右後方に取り付けられている
  • フロントフェンダーには「ELECTRA-GLIDE」のエンブレムが取り付けられている
  • スターターはエンジンの背後、ギアボックスの上に配置された
  • スターターやその他の改変により、全重量が34kg増量した
  • エンジンの馬力は新しいカム、より高い圧縮比の使用により、65以上になった

細かな改良

ロッカーカバー(パンカバー)の違い

48〜49年は鉄とメッキで形状が深い。

50〜65年はオイル漏れを防ぐために「D型リング」が組み込まれて形状も若干浅くなっている。

前期型・後期型

パンヘッドはデュオグライドの登場と共に、前期と後期に分けられる。

57年までが前期型。58〜65年が後期型となる。

最後に

1948年から17年間続いた「パンヘッド」の時代。

毎年行われるマイナーチェンジ。

振り返ると、

スプリンガーフォークのヨンパチ

テレスコピックフォークのハイドラグライド

シフトチェンジの変更

FLHの登場

リジットフレームの廃止

リヤサスペンションのデュオグライド

リヤブレーキの油圧ドラム

エレクトラグライドの登場

セルスターターの装着

バッテリー6Vから12Vに変更

この「パンヘッド」の時代にはハーレーダビッドソンの進化への情熱がとても感じられ、「パンヘッド」と言うモーターサイクルにとても興味が湧いてきます。

「パンヘッド」はこの後、役目を終え

次世代エンジン「ショベルヘッド」へとバトンを繋ぐのです。

ショベルヘッドについての記事はこちら↓↓↓

ハーレーダビッドソン・ショベルヘッドを知ろう【ビッグツイン編】

この記事を書いた人
MCM

モーターサイクルミュージアム【MCM】とは、日本4大メーカー・ハーレーダビッドソン・インディアン・BMW・トライアンフ・ドゥカティ・ロイヤルエンフィールド・素晴らしいモーターサイクルの世界を歴史と共に紐解くサイトです。各メーカーの知恵と技術と努力を調べています。温故知新。世界の名機をぎゅっと詰め込んだそんなサイトを作りたいと思っています。

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